つかこうへい正伝 1968-1982

つかこうへいの芝居は観たことがない。

芝居を観たといえるのは光源寺で年に一回興行していた水族館劇場だけだと思う。これはとても楽しみなイベントだった。そういえば小倉公演にも仲間とツアーを組んで飛行機ででかけた。

この本の中に劇場に観客が入りきらなくて、スタッフが舞台前で桟敷に座っている客に向かって「はい、お尻を上げて右に10センチずれてください、せーのっ!」とやってる場面があって、あっ、これは水族館劇場でもあったなあと懐かしくなった。また観たいなあ。

ぼくは、つかこうへい作品では映画「蒲田行進曲」、小説「広島に原爆を落とす日」の2作にしかふれていないと思う。「熱海殺人事件」は筋を知っているから何かでみたかもしれないけど覚えていない。

1992年頃に小説「広島に原爆を落とす日」を単行本で読んでひどく興奮したことを覚えている。それ以来なんとなく気になっているけど他の作品に接しようと思わなかったのはなんでかなあ。まあこの本を興味深く一気に読んだあとでも、何か他に読んでみようと思わないというのは合わないってことなんだと思う。

以下断片的に。

堀田善衛の娘、堀田百合子と慶応文学部で同級生で、惚れてたようだというのが興味深い。田舎からでてきた自信満々の大学生が、東京の洗練された女子大学生に抱く気持ちが自分にもわかって痛々しくて。つかこうへい撮影のスナップ写真も載ってるけどかわいいもんなあ。

根岸季衣は最初にみた記憶はたぶん「ふぞろいの林檎たち」、まだぼくは子どもだったけれど雰囲気が独特であのドラマの中でもちょっと存在感が浮き上がって感じたなあ。こんな風につかこうへいを経由してたんだな。

三浦洋一もつかこうへい経由とは実は知らなかった。彼も独特の存在感があったな。平田満はぼくにはよくわからない。やっぱりつか舞台の人なのかも。

上橋菜穂子 「獣の奏者」 全5冊合本版(講談社文庫)

講談社
発売日 : 2014-11-28

堪能した。上橋菜穂子の小説は初めて読んだ。直木賞の「鹿の王」はまだ読んでいない(年末年始に読みたい)。

ファンタジー小説は長いしうまく乗れないと辛いので躊躇してしまうのだけど、Kindleで5冊合本でこの価格ならと駄目なら駄目でいいかと読み始めたら、すっかりエリンの世界にはまって4日間で読み終えた。

どうもこっちが知らなかっただけで有名な作品だったみたいで、内容をあれこれいうのは恥ずかしいので何も言わない。

暮れになって追っかけて読みたい作者を見つけられたことがうれしい。

ハヤカワ文庫SF総解説2000

著者 :
早川書房
発売日 : 2015-11-20

楽しい本だなあ。拾い読みがとにかく楽しい。

買ってしばらくはカバンにいれて持ち歩いてちょっとした隙間の時間に拾い読みを楽しんだ。いつまでも読んでいられる。

読んだことのある作品解説も楽しいし、読んだことのない作品解説も楽しい。どっちも楽しい。

無人島本かもしれないと思った。例えばアシモフの小説を一冊持っているのと、この本を持っているのとを考えると…こっちだなあ。

読んだ記憶の断片だけを楽しむのも悪く無い。ずっと手元に置いとく本。

J.P. ホーガン 「星を継ぐ者」、「ガニメデの優しい巨人」、「巨人たちの星」

一気に三作再読。やっぱり面白いなあ。

と勢いで「内なる宇宙 上」を読み始めたんだけど…こっちはなかなか乗れず。積読に逆戻り。なんでかなあ。

春宵十話 - 岡潔

春宵十話 随筆集/数学者が綴る人生1 (光文社文庫)

長く読まれているようだけれど、僕は今回初めて読んだ。と思う。ちょっと既視感があるけれど、たぶん気のせい。
最近新潮文庫からでた小林秀雄との対談「人間の建設 」を読んだのがきっかけ。ことばの使い方が独特でもっと読んでみたくなった。ちなみにこの「人間の建設」もとても面白い。今ならどこの書店でもすぐに手に入るしおすすめ。

この「春宵十話」は、岡潔が話したことを文章にまとめたもの。それはないだろう、という発言もたくさんあるのだけれど、岡潔の正直さが心地よくて、とてもよい気分になる。

春の野に咲くスミレはただスミレらしく咲いているだけでいい。
咲くことがどんなによいことであろうとなかろうと、それはスミレのあずかり知らないことだ。
咲いているのといないのとではおのずから違うというだけのことである。

存在を全肯定していると勘違いしてしまうかもしれないけれど、そういう文脈じゃない。でもそういう勘違いとして受け取っても気持ちいい。

職業にたとえれば、数学に最も近いのは百姓だといえる。種をまいて育てるのが仕事で、そのオリジナリティーは「ないもの」から「あるもの」を作ることにある。数学者は種子を選べば、あとは大きくなるのを見ているだけのことで、大きくなる力はむしろ種子のほうにある。

この後、物理学者は指物師だ、と続く。

戦争中を生き抜くためには理性だけで十分だったけれども、戦後を生き抜くためにはこれだけでは足りず、ぜひ宗教が必要だった。その状態はいまもなお続いている。
宗教はある、ないの問題ではなく、いる、いらないの問題だと思う。

いる、いらないの問題。僕はまだいまのところはいらない。

しかし、春のぽかぽか陽気にのろうと昨日読み出した訳だけど、読み終わった今日の寒いことよ。気温差15度ってどうなんだ。


代替医療のトリック - サイモン・シン

読了。必読の書。

読みやすく、重点ポイントが繰り返し語られるから読書になれていなくても心配なし。こういう科学読み物に慣れていないひとにもおすすめ。面白いミステリー小説を読んでいるように、どんどん先が読みたくなる。

プラセボが何故ダメなの?効くならいいじゃんプラセボでも。というのがなぜマズいのか、最後まで読んでよく理解できた。説得された。はあー、面白かった。

ホメオパシーがプラセボ以上の効果がないなのはなんとなく知っていた。けれど、鍼治療もかあ。
あとカイロプラクティックも。これは日本で言う骨接ぎ、整体とは少し歴史的な経緯が違うけれど、例えばWikipediaの柔道整復術をみてみると、自然治癒能力、伝統医療という言葉が並んでいる。代替医療の宣伝文句として頻繁に用いられる言葉として、自然(ナチュラル)、伝統(トラディショナル)、全体(ホーリスティック)の3つを挙げているのだけど、そのうち2つが最初のパラグラフにでてくる。ピンポーン。

こういった個々の代替治療が効くとか効かないとかを知るのも大切だけれど、この本のおもしろさ、すごさはそこじゃない。マニュアル的に参照するだけなら付録としてたーくさん書いてあるリスト(浪越徳次郎の指圧も出てくる)を立ち読みすれば済んじゃう。

この本のすごさの中心は、科学的な根拠(臨床試験)に基づく治療を選ぶことがなぜ重要なのかを教えてくれること。歴史のエピソードを交えて緻密に論理を積み重ねながら、ぐいぐい引き込む文章の力と合わさって。

周囲の子を持つ親には身銭で買い与えたいぐらい。でもそういう熱心が詐欺的な代替医療の特徴でもあってね。クールに薦めるにはどうすればいいんだろ?この種の健康に関する話はとても難しい。できれば友人とは話しあいたくない(家族は別。ちょっとモメてもよく話し合ったほうがいい)。知的な読み物として面白いから読んでみたら?ぐらいか。

しかし、世界レベルはすいごいなあ。

あ、そうだ。サイモン・シンの本はどれもそうだけれど、この本も翻訳がとてもいい。