『くまくまパン』(あかね書房)

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

先週から始まりました、西村敏雄さんの原画展示+販売会
熱心なファンの方や各社の編集者さんなどが駆けつけてくださっています。
展示は5月末まで。まだまだ続きますので、どうぞお立ち寄りください!
素敵な原画をお部屋に飾るチャンスでもありますので、ぜひお気に入りの絵を見つけてくださいね☆

さて、今日の紹介はこちら。

西村敏雄『くまくまパン』(あかね書房)


おさななじみの くまさんとしろくまさんが、パンやを始めました。
あんぱん、メロンパン、ドーナツ。
カレーパン、ピザパン、やきそばパン。

ふたりがつくるパンはどれも美味しそう!
お店をあけると、早速たくさんのお客さんが。
ふたりのパンはたちまち町じゅうの評判になりました。

ある日のこと。
お客さんに「このみせで いちばんの おすすめの パンは なんですか?」と聞かれたから、さあ大変!
「わたしがつくったあんぱんです」
「いやいや わたしがつくったカレーパンです」
ふたりはどちらもゆずりません。
くまたちはとうとうケンカを始めてしまいました。

次の日も、その次の日もお店は休み。
「はやく なかなおりして みせが あかないかな」
みんなが困って話していると、そこにやってきたのは王様のかば。
お店の評判を聞いて買いにきたのです。
わけを聞いた王様は「わたしに まかせなさい!」と言って、一番おいしいパンを出すように、くまたちに命じます。

ふたりは支度をしますが、やっぱりケンカ中。
くまさんはあんぱんを、しろくまさんはカレーパンを作りますが、それを食べた王様は、
「このパンはあますぎる!」「このパンはからすぎる!」
と言って怒り出してしまいました!

困ったふたりが作ったものは……。

ふたりのお店に並んでいるパンを見ているだけでおなかが空いてきます。
そしてパンを買って帰るどうぶつたちの楽しそうな顔!
明日のお昼はもうパンで決まりですね!

当店のある谷根千エリアにもおススメのパン屋さんがたくさんありますよ。
お越しの際は、ぜび美味しいパン屋さんもチェックしてみてくださいね☆

展示の詳細ページはこちら
http://hirunekodou.seesaa.net/article/434811741.html?1461577815

『バルバルさん』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

西村敏雄さんの絵本紹介、その3です。

乾栄里子・文/西村敏雄・絵
『バルバルさん』(福音館書店)



まちのはずれにある小さな床屋さん。
バルバルさんはそこで毎日楽しくはたらいています。

ある朝、カランカランとドアが開いて、入ってきたのはなんとライオンのお客さん!
バルバルさんはとてもびっくり。
「ど どうぞ こちらへ」まずはイスへとご案内。
どうやら立派なたてがみがからまってしまったよう。
「すこし みじかくしましょうか」「うん まかせるよ」

チョキチョキチョキチョキ
チョキチョキチョキチョキ


最後にブラシでとかしてあげるとライオンは大満足。
バルバルさんはほっとしました。

すると次に入ってきたのはワニのお客さん。

「おれ かみのけが ないんですけど けをはやす いいほうほうはないですか」
バルバルさんはいろいろなカツラを出してためします。
「よく おにあいですよ」

ワニは、はなうたをうたいながら帰っていきました。

そのあともヒツジやリスのお客さんが。
おもての「とこやバルバル」の看板をみると、そこには〈どうぶつの〉といういたずら書き!

バルバルさんはブラシで消そうとして「まてよ」と手をとめました。
「これはこのままにしておこう。このらくがきのおかげで、きょうは なかなかたのしかった」

バルバルさんのお店には、今日もいろいろなお客さんがやってきます――。

すっかりきれいになって、バルバルさんのお店を出る動物たちの表情がとても満足げ。
こんな床屋さんに髪を切ってもらいたいものですね。

ひるねこBOOKSの看板にも、どなたか〈どうぶつの〉とらくがきしてもらえると嬉しいです(^^ゞ

西村さんのオリジナル原画展示は4/21~です。
素敵なサイン本もございます☆

いよいよ発売!『Fika』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

待ちに待った新刊が発売されました!

塚本佳子/見瀬理恵子 『Fika』(Pヴァイン)



スウェーデンのお茶の文化、fika(フィーカ)
人びとが顔を合わせれば、まるで挨拶の言葉のように
「スカ・ヴィ・フィーカ(お茶にしましょう)?」という声が弾む──

スウェーデンの人々の生活に深く根付いているお茶の文化。
この本はそんなfikaで食べられているお菓子を季節ごと、行事ごとに紹介しています。
読むだけでなく、実際に楽しむためのレシピ集でもあります。

とにかく可愛らしいお菓子のイラストが満載で、まるで暦の絵本を眺めているかのよう。
お茶のことだけでなく、スウェーデン文化にまつわる豆知識もたくさん詰まっています。

ちなみに昨日4/14は「天然酵母の日」だそう。
10年ほど前から天然酵母ブームが続いており、市販されている酵母種を買って、
家庭でパンを焼く人が多いのだそうです。
とはいえ、なかなか扱いが難しい酵母。
そこで長期不在にする人が酵母を預ける「天然酵母ホテル」なるものが2011年に誕生したのだそうです!
さらに2015年には海外旅行者用に、空港にもホテルができたとのこと。
まるでかわいがっているペットを預かってもらうような感覚ですね。

話がそれてしましまいましたが、こんな愉快なエピソードもたくさん盛り込まれています。
スウェーデン、そして北欧好きならぜひぜひおススメです!!

当店では著者の塚本さんをお招きして、イベントを行います。
プチfika体験をしながら、本のことやスウェーデンのことなど、いろいろとお話をうかがいます。
ぜひご参加くださいね!

詳しくはこちら
http://hirunekodou.seesaa.net/article/434882241.html?1460712347

『悩みが消える食卓』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

おかげさまで当店は本日で開店3ヶ月を迎えました。
この間、店内中央の新刊台は常に変わっているのですが、
オープン以来、唯一継続して平積みしているのがこちらの本です。

Megu・著『悩みが消える食卓』(サンマーク出版)



健康や食事、美容などについては、本当に様々な書籍が刊行されています。
当然ながらそのどれもに良し悪しがあり、一時のブームで話題になったものの、
あっという間に誰にも読まれなくなってしまうものも多いのが実情です。

この本の初版は2011年。
刊行から5年が経とうとしていますが、その内容はまったく古びることなく、
むしろいつまでも残ってほしいと思う一冊です。
個人的な感想ですが、これを読めば体や心にまつわる多くの悩みが解決されるのではと思っています。

著者のMeguさんがご自身の経験から生み出した、
マクロビオティックとローフード(生食)を融合させた「食べ方」

玄米食の優れた点、白砂糖やジャンクフードの依存のこと、食べる順番や、
外食が続く時の心得など、その内容は盛りだくさん。
ですが専門書ではないので、難しく考えることなく言葉がすっと胸に入ってきます。

そしてその「食べ方」はそのまま幸せな「生き方」につながります

「そうは言ってもなかなか実践するのは難しい。」確かにそうですよね。
食事は大切なものだからこそ、その状況にあわせていくべきです。
文中にも何度も登場しますが、決してストイックにならず、食事を楽しむこと。
食事のあり方は人それぞれ、楽しみ方もそれぞれです。
ただ、ちょっとだけ普段の食事を変えるだけでハッピーな毎日が過ごせるなら、
試さない手はありませんよね。

新生活が始まる春。環境の変化でストレスもたまりがちです。
でも食事だけは自分で選び取ることができます
少し疲れが出てきたら普段の食べ方を意識して、心も体もリフレッシュしましょう!


『人町』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

荒木経惟、 森まゆみ『人町』(旬報社)


人町

谷根千の様々な風景、そこに暮らす人々の姿を切り取った写真集。
今はすっかり人気観光地となった「谷中・根津・千駄木」ですが、
そこには昔から続いてきた、町に根付いた人々の暮しがあります。

アラーキーさんの写真からは、そんな人々の息遣いがひしひしと伝わってきます。
カメラに向けられる笑顔もとても印象的。
そして森さんの文章からも、この町の住人に向けられる温かな眼差しが感じられます。
愛情たっぷりの言葉たち、ぜひお読みください。

初版は1999年。
今はすでになくなってしまったお店や景色もたくさんあります。
それらを見るとちょっぴり切なく、抱きしめたい思いにかられます。
自宅近くのお店や、普段何気なく通りすぎる場所。
これまで知らなかったエピソードを発見することもできました。

森さんのあとがきによると、それまでプロが撮った谷中の写真集は無かったそう。
この町の記録として、ずっと大切にしていきたい本です。

『はらぺこニードル』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

西村敏雄さんの絵本紹介。
前回の『わたしはあかねこ』に続きまして、今回はこちら。
ネコではなくイヌの本ですよ!

清水真裕 さく/西村敏雄 え 『はらぺこニードル』(童心社)


はらぺこニードル (絵本・こどものひろば)

町のレストラン通りは今日もにぎやか。そこへ腹ペコのノラいぬがやってきます。
細~い体にとがった鼻。いぬの名前は「ニードル」です。

美味しそうなにおいにつられてお店に入ったニードルは、料理をめざして思わず背伸び。
ですが、「おい、なんだ、このいぬは!あっちへいけ!」
びっくりしたニードルは外へ逃げ出しました。

お腹をすかせたニードルがたどり着いたのは、町はずれにある「ヌードルのめんのみせ」
細~い体を見かねたコックさんが出してくれたのは、とっても美味しい山盛りのめん。
ニードルはもう夢中です。

でも、どうしてでしょう?こんなに美味しいのにお客さんが一人もいないのです。
どうやら町なかの人気のお店にばかりお客さんが行ってしまうそう。

そこでニードルは良いことを思いつきます!
コックさんにお願いして、ながーい ながーい ながーい めんを作ってもらうと、
それを自分のしっぽに結び付けて……。

やせたノラいぬ、ニードルが機転をきかせて大活躍!
みんなが笑顔でめんを口にはこぶ様子が、とても幸せそうで印象的です。

余談ですが、西村さんご自身が当店の近くにお住まいということもあって、
町の様子はどことなく谷根千エリアの商店街を思い起こさせます。
そんなちょっぴりレトロな町並みにも注目して、絵本も散策もぜひ楽しんでくださいね!


ちなみに同じ題材の紙芝居で『やせいぬニードル』もあります。


やせいぬニードル (ともだちだいすき)

4/21~の展示についてはコチラ
http://hirunekodou.seesaa.net/article/434811741.html?1460103394

『わたしはあかねこ』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

4/21からはじまる西村敏雄さんの原画展示に向けて、
店内には西村さんの絵本が増えてまいりました。
直筆のサイン本もございます。

こちらでも少しずつ西村さんの絵本を紹介していきたいと思います。
まずはやはりこちら!
サトシン 作/西村敏雄 絵『わたしはあかねこ』(文渓堂)

しろねこかあさんと くろねことうさんから生まれた、あかねこのわたし。
きょうだいたちは、しろねこ くろねこ とらねこ ぶちねこ。
わたしひとりだけ赤い色だから、おとうさんおかあさんは よくため息ついてるの。
「どうしてあのこだけ いろがちがうんだろう」。

みんなよりたくさんのミルクを飲ませようとしたり、黒い魚を食べさせようとしたり。
きょうだいたちは小麦粉をふりかけたり、泥のなかで遊ぼうとしたり、ペンキでもようを書いたり……。

でもね、わたしは きれいでかわいいこの色がすき。
みんなと一緒なんてつまんない。だから家をとびだしたの……。

村を出て、林を抜けて、いろんなところに旅をして。
新しい町で暮らし始めたあかねこには、素敵な出会いがまっていました。

「そのままのじぶんがよかったの」というあかねこの気持ちが素直に描かれていて、
多くの子どもたち、大人たちの共感をよんでいます。
最後の場面も印象的。そして物語は裏表紙まで続いていますのでお見逃しなく。

春は別れと出会いの季節。
新たなスタートを切った人にもおすすめしたい一冊です。

『そらとぶカカシ』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

本日の入荷より。
長新太、スズキコージ、佐々木マキ、井上洋介、堀内誠一など。

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スズキコージさんの『そらとぶカカシ』(福音館書店)、ぶっとび感がたまりません。

おじいさんが畑のカラス除けのためにつくったカカシ。
帽子をつつかれ、髪の毛を一本抜かれたカカシは「ぐるぐるかいてん」してカラスを追い払いますが、
今度はカラスが大勢の仲間を連れて戻ってきます。
かんかんに怒ったカカシは「ものすごいはやさでかいてん」して、そのまま空へ舞い上がり……。

地上から遠ざかるとき、逆におじいさんの家がだんだん近づいてくるときの描写など、
自分がカカシになったかのようにスリル満点でとても楽しめます

おじいさんと犬の、味のある表情も注目です!


そらとぶカカシ (福音館創作童話シリーズ)

『アイスランド紀行―氷と火の島から』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

小林理子・著『アイスランド紀行―氷と火の島から』(彩流社)


アイスランド紀行―氷と火の島から


北欧本を多く揃える当店ですが、これまでアイスランド関係の本はありませんでした。
そして先日初めて入荷したのがこちらの本。
アイスランドに関する本を読んだことがなかったので、すぐに読んでみました。

本書は、著者が1999年4月~5月にアイスランドを旅した際の紀行文です。
2016年の現在とは様々な状況が異なりますが、アイスランドという国を理解するのにはうってつけの一冊といえるでしょう。

著者夫妻の夢は、アイスランドへの新婚旅行。
ですが、当時は日本からアイスランドへの旅行者は少なく(今もそれほど多くはありませんが)、
旅行会社をあたってもほとんど情報を得られないまま、悶々とした日々を過ごします。
そして運よく見つけた格安ツアーで、ついに念願の新婚旅行へ!
現地滞在たったの3日半!という駆け足で彼の地を満喫し、帰りの飛行機では早くも再訪を考える……。

といったところまでが「はじめに」で語られ、そのあとは
3年後に著者が1人で訪れた際のアイスランドでの生活が描かれます

吹き付けてくるマイナスの風に寒さを通り越して痛みを感じたり、
お肉を買おうと思っても、大きな塊でしか売っていなかったり、
「スペシャルホリデー」にはすべてのバスが運休していたり……。

日本との文化の違いを感じ、様々な困難・トラブルに見舞われながらも、
たくましく乗り越えていく著者の行動力には脱帽です。
英語が話せる、文通相手の家族が助けてくれる、といった恵まれた状況もありますが、
とにかくいろいろなものを見聞きし、食べた「探訪記」はアイスランド旅行のバイブルとなるでしょう。
一人旅だからこそ触れられた、人々の温かさ、魅力的な風景が、実感をもって語られています。
詳細はぜひ本書をお読みください。

北欧というとフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークの4か国が取り上げられがち。
アイスランドといえば、オーロラ、白夜、そして名前の通り「寒い」というイメージですが、
本書を読むと、この素敵な国の奥深さに触れることができます。

まだまだ馴染みの薄い、神秘の国アイスランド
訪れてみたい国の一つに加わりました!






春にぴったり!『あらいぐまのアリス』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

春分の日ですね。春といえばこの絵本を真っ先に思い浮かべます。



竹下文子・さく/こみねゆら・え 『あらいぐまのアリス』(童心社)

あらいぐまのアリスは のんびりや。
なにをするのも のんびり ゆっくり。
お母さんに「アリス、はやくしなさい」と言われても返事は「はあーい」

お風呂のせっけんは全部なくなっちゃうし、歯磨きものんびりゆっくり。
(おかげで虫歯は一本もありません)

お友だちが誘いにきても、手を洗ったり顔を洗ったりで、すっかりお待たせ。
ピクニックに出かけても、歩くのがのんびりだから、「はやくー」「おいてっちゃうよ」

だけどのんびりしているから、きれいなお花を見つけたり、
たくさんのお魚や、おいしそうな木いちごと出会ったり。

アリスの見つけた木いちごをみんなで摘んで、
家に帰ったらお母さんにジュースやジャムを作ってもらおうね。

たくさんあそんで帰り道。

「たのしかったね」
「うん、またこようね」

アリスもみんなもゆっくり歩きます。


うららかな春の日にぴったりの絵本です。

のんびりしているから見つけられる大切なもの。
ゆったりした気分でいかがでしょうか?

『貧乏は幸せのはじまり』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

『貧乏は幸せのはじまり』(ちくま文庫)



著者は言わずと知れた、書評家・古本ライターの岡崎武志氏。
古今東西の有名人たちの「貧乏」エピソードが紹介されています。

貧乏なのになぜかいつもモテモテだった詩人・金子光晴
文豪の娘とは思えないボロボロのアパートに暮らした森茉莉
全盛期の2億円の収入から一転、2万円のお年玉で金縛りにあった岸部四郎
その他、五木寛之、赤瀬川源平、西原理恵子、井上陽水、明石家さんま……などなど。

さらに三好達治や石川啄木の借金術から、「パンの耳」や「四畳半」の話まで、
とにかく貧乏話が満載で、時にしんみり、時にクスッとさせられる「貧乏指南書」

とても悲惨な状況なのに、どこかユーモラスで朗らかな「貧乏」ならぬ「ビンボー」に、
こちらまで明るい気持ちにさせてくれます。

お金がないからこそ生まれる生活の知恵や、持たない暮らしの幸福感などは、
学ぶべきところが多いかもしれません。

あとがきで引用されていた、映画「群衆」の1場面。

「金ができると俗物が集まってくる。いつのまにか車を買わされる。
車を買えばガソリンに税金に保険に違反の罰金だ。
払うために働くハメになり、自由はなくなり、自分も俗物になるんだ」

金と自由の関係を見事にあらわしたこのセリフこそ、本書に登場した人物たちが学び、
そして身に付けた真理なのかもしれません。
そしてそれが「幸せのはじまり」なのかもしれませんね。

ライター荻原魚雷氏、古書ますく堂店主の増田啓子氏との対談も読み応えバツグン!
実感のこもった、明るいビンボー話に勇気と元気をもらえます。


花森安治の編集室

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

『花森安治の編集室』(晶文社)


花森安治の編集室

「稀代の天才編集者」
「戦後を代表するジャーナリスト」
「日本の暮らしを変えた男」
そして、「極めつけの頑固者」
……。

雑誌「暮しの手帖」初代編集長である花森安治を形容する言葉は尽きることがありません。
戦後のジャーナリズム史に輝かしい実績を残し、今なおその名が語り継がれる名編集者の姿を
同じ編集部に属していた著者が語る、花森安治の“伝記”であり“人物評”です。

面接でのやりとりから始まって、編集会議のことや花森の服装や言動、所作について、
「お当番さん」という社内の決まりのことや有名な「商品テスト」に関すること……。

これまでも花森安治に関する本や記事は読んできたのですが、
本書からは、同じ時間、空間を共有していた人物だからこそ感じられる、
花森安治の息遣いのようなものが伝わってきます。

常にまわりに怒鳴ってばかりいて、傍若無人。
頑固者で、他の意見を寄せ付けない独裁者。
そんな“鬼編集長”のイメージを持たれる花森安治ですが、
その根本にあるのは「日本の暮らしを良くしたい」という信念です。
そしてそのために、ジャーナリズムは、雑誌は、編集者はかくあるべき、
という意識、思想が彼を突き動かしていたのです。

二度と悲惨な戦争を繰り返さないために。
日々の暮らしを押しつぶされないために。
権力や大資本という、大きな力に抵抗し、
自分たちの力で自分たちの暮らしを守る。
それが花森の目指していたことではないでしょうか。

いま、私たちの暮らしを脅かされるような出来事が続いています。
政治であり、環境であり、食や住まいのこと、子育てや働き方のことなど様々で、
各人によってその問題意識は異なります。

折しも4月から始まるNHKの「朝の連続テレビ小説」は、「暮しの手帖」がテーマのようです。
今こそ、自分たちの暮らしに目を向ける時がきているように感じます。

いま読みたい絵本『きぼうのかんづめ』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

『きぼうのかんづめ』(ビーナイス)


きぼうのかんづめ

3月になりました。
ちょうど1週間後は、3月11日。
あの東日本大震災から間もなく5年を迎えます。

震災の翌年に刊行されたこちらの絵本は
実話をもとに描かれています。

主人公の「かんた」は小学一年生。
かんたの家は、石巻にある小さな缶詰工場です。
工場でつくられるサバ缶は「めちゃくちゃおいし」く、
東京の経堂にあるラーメン屋さんでは「サバ缶ラーメン」が名物に。

そんな暮らしが一変したのは、あの3.11でした。
押し寄せた津波が一瞬にして町を飲み込み、
大切な缶詰も土や泥に埋もれてしまいます。
工場は閉鎖のピンチに立たされました。

しかし経堂のラーメン屋さんが言った
「缶詰ってなあ、丈夫なんだぞ!絶対に中身は大丈夫だ!」
という一言が、工場を救います。

埋もれた缶詰を掘り出しては東京に運びこみ、
ラーメン屋さんの隣のガレージでは、常連さんが中心となって
缶詰を洗って洗って洗い続けます。

そしてその缶詰をつかったラーメンは
「きぼうの缶詰ラーメン」としてメディアにも取り上げられ、
連日の大行列!

まさに大勢の人の力があわさって、希望を生み出したのです。

「あの日、津波に流されずに残ったものがあった。
それは希望だった。」


この帯の言葉の通り、多くのものを失い、絶望の淵に立たされながらも
決してあきらめなかった人々の勇気や希望が、この缶詰と絵本に詰まっています。

5年を迎える今もなお、多くの方が困難を強いられています。
絶対に忘れてはならないあの日を、この物語とともに胸に刻みます。




道化と王

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

『道化と王』(柏書房)


道化と王 (ヨーロッパ歴史ノベル・セレクション)

時は17世紀。イングランド。

「不細工でだらしがない」
「かつらがなければ見苦しい」
「鼻は驚くほど低い」

自身でもそう説明せざるをえないほどの醜男、
その名もロバート・メリヴェル。

ひょんなことからチャールズ2世に召し抱えられ、
王の「道化」として生きた男の生涯を描いた物語です。

王の愛人と“偽装結婚”させられ、その見返りとして立派な邸で何不自由なく暮らすものの、
生来の女好きが災いしたのか、王の愛人(自分のみせかけの妻)に好意を抱いてしまいます。
その罰として邸は没収。なんとか救いを求めた先は、友人の働く精神病院でした。

慣れない環境で懸命に働き、自分の生きることの意味を見つめなおしつつあったメリヴェルですが、
やはりここでも女性への気持ちを抑えることができず、結果として追放されてしまいます。

その後戻ったロンドンで、昔の知識を生かして医者として働きはじめ、
ようやく平穏無事な暮らしを手に入れて、晴れてハッピーエンド、
かと思えば今度は町が大火事に襲われて……。

というように、メリヴェルの人生はまさにジェットコースターのよう
安定を手に入れたかと思うと、(主には自分のせいで)また災いがやってきます。

そして敬愛する王との距離は近づいたり遠のいたり。
忘れようとするものの完全には忘れられません。
どんな暮らしをしていても、その心の中には常に「王」がいるのです。
「道化」としての役割はその都度変わりながらも、やはり王とともに生きることを選んだのが、
このメリヴェルという男でした。


不細工でだらしがない。だけど一途で憎めない。
これほど魅力的な主人公にはそうそう出合えません。

圧巻のストーリー展開でありながら、人の心の揺れや弱さなども細かく描かれています。
ハラハラドキドキしながら、一気に読み進んでしまいました。
あとがきで訳者の金原瑞人さんが「ロンドンからの飛行機で一睡もせずに読み続けていた」旨を
書かれていますが、本当に物語に引き込まれるという感覚でした。

こちらは柏書房の「ヨーロッパ歴史ノベル・セレクション」の第1巻。
今後のラインナップも楽しみです!


おじいちゃんのゆめのしま

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

『おじいちゃんのゆめのしま』(評論社)

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おじいちゃんのゆめのしま (評論社の児童図書館・絵本の部屋)

現実世界から秘密の「入り口」を通って異世界へ行くという児童文学の王道をいきながら、
愛する人との別れについても自然に感じとれ、ポップな見た目以上にテーマ性のある絵本。

また、必要以上に言葉に頼らない、「間」も素敵でした

絵も柔らかで、鮮やかで、清々しいです。
海に出るシーンや、ジャングルの中の場面はとても印象的でした。

AOI世界イラスト賞(子どもの本部門)
セインズベリーの児童図書賞最優秀賞絵本




老人と猫

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

『老人と猫』(エクスナレッジ)


老人と猫

著者のニルス・ウッデンベリ氏はスウェーデン人。
大学で医療心理学を教え、生命観の研究に従事しています。
本書はそんな著者が「どんなふうに猫にぞっこんになっていったか」
を描いた物語です。

教授という地位を得て、物書きでもある主人公の「私」。
そこに新たに「猫の飼い主」という肩書が加わった、
そんな書き出しから物語は始まります。

ある日ブラインドを上げてみると、門の上に1匹のネコがいて
大きな黄色い目でこちらをじっと見つめています。
そしてその次の日からネコは毎日姿を見せるようになり、
どうやら小さな物置小屋に住みついているらしいことを知ります。

「あの猫が早く私たちに見切りをつけてくれればいいが」
そう思いながら、2週間ほど家を空けて帰ってくると、
やはりそこには猫の姿が。

夫婦ともに猫は嫌いではない。だが趣味は旅行。
ペットを飼うなんて柄ではないし、現実的に無理……。

最初はそんな風に考え、できるだけ関わらないように振る舞います。
あくまで「寒いしお腹も減ってそうだから、仕方なく面倒を見ている」という風に。
ですが、ネコはその魅力を使って、少しずつ少しずつ家に入り込みます。

そしてついに「猫はどこにいる?」が夫婦の口癖となり、
日常の一部となったネコは「うちのキティ」と名前をもらいます。

仕方なく(?)飼い始めたキティですが、姿が見えないだけで不安になったり、
反応が気になってしまったり、だんだんとその存在が大きくなります。
やがては、キティのおかげで規則正しい生活が送れるようになったり。
それはまるで恋をしているかのよう!

ネコを飼った経験のある人には、とてもよくわかる心情かもしれません。


本書の面白いところは、ただの愛猫記ではなく、
心理学の教授がネコの不思議な世界を読み解こうとするところにあります。
「キティに感謝の気持ちはあるのか?」
「キティは私のことを信頼してくれているのか?」
このあたりはぜひ本書をお読みください。

そして物語は、ネコと人間の歴史、名だたる文学者のネコに関する逸話や研究、
スウェーデンにおける野良猫対策などへと広がっていきます。
人と動物とのかかわりについて深く考えさせられます。

ネコだけでなく、いろいろなペットを飼っている方、そして飼おうとしている方に
ぜひ読んでいただきたい一冊です。