老人と猫

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『老人と猫』(エクスナレッジ)


老人と猫

著者のニルス・ウッデンベリ氏はスウェーデン人。
大学で医療心理学を教え、生命観の研究に従事しています。
本書はそんな著者が「どんなふうに猫にぞっこんになっていったか」
を描いた物語です。

教授という地位を得て、物書きでもある主人公の「私」。
そこに新たに「猫の飼い主」という肩書が加わった、
そんな書き出しから物語は始まります。

ある日ブラインドを上げてみると、門の上に1匹のネコがいて
大きな黄色い目でこちらをじっと見つめています。
そしてその次の日からネコは毎日姿を見せるようになり、
どうやら小さな物置小屋に住みついているらしいことを知ります。

「あの猫が早く私たちに見切りをつけてくれればいいが」
そう思いながら、2週間ほど家を空けて帰ってくると、
やはりそこには猫の姿が。

夫婦ともに猫は嫌いではない。だが趣味は旅行。
ペットを飼うなんて柄ではないし、現実的に無理……。

最初はそんな風に考え、できるだけ関わらないように振る舞います。
あくまで「寒いしお腹も減ってそうだから、仕方なく面倒を見ている」という風に。
ですが、ネコはその魅力を使って、少しずつ少しずつ家に入り込みます。

そしてついに「猫はどこにいる?」が夫婦の口癖となり、
日常の一部となったネコは「うちのキティ」と名前をもらいます。

仕方なく(?)飼い始めたキティですが、姿が見えないだけで不安になったり、
反応が気になってしまったり、だんだんとその存在が大きくなります。
やがては、キティのおかげで規則正しい生活が送れるようになったり。
それはまるで恋をしているかのよう!

ネコを飼った経験のある人には、とてもよくわかる心情かもしれません。


本書の面白いところは、ただの愛猫記ではなく、
心理学の教授がネコの不思議な世界を読み解こうとするところにあります。
「キティに感謝の気持ちはあるのか?」
「キティは私のことを信頼してくれているのか?」
このあたりはぜひ本書をお読みください。

そして物語は、ネコと人間の歴史、名だたる文学者のネコに関する逸話や研究、
スウェーデンにおける野良猫対策などへと広がっていきます。
人と動物とのかかわりについて深く考えさせられます。

ネコだけでなく、いろいろなペットを飼っている方、そして飼おうとしている方に
ぜひ読んでいただきたい一冊です。


フィンランド語は猫の言葉

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稲垣美晴『フィンランド語は猫の言葉』


フィンランド語は猫の言葉

「ずっと前にはやった“激”という字を遅ればせながら使うとすれば、
私はさしずめ『激芬家』(ゲキフンカ、激しくフィンランドのことをやる人)
というようなところでしょうか」


この言葉の通り、著者の稲垣美晴さんの激しく、そして楽しい
フィンランド留学記です。

フィンランドの芸術に魅せられ、渡芬した著者。
でも文化は全然違うし、とにかく複雑なフィンランド語。


フィンランドで泣いたのは2回。
1度はあまりに寒くて。
もう1回は、言葉があまりに難しくて。
それなのに各地の方言の授業までとるからまた大変!
試験の科目数は多いし、どの試験をとってみても
勉強に1年間はかかりそう……。
にも関わらず優秀な成績をおさめるあたりはさすが!
としか言いようがありません。

具体的な表現方法や、発音、文法のこともしっかり書かれていて、
エッセイとして楽しみながらフィンランド語に親しめます。

また、フィンランドに興味のない人でも、一人の女性の留学記として
楽しく読み進めることができるでしょう。

何しろこの時代(1970年代)には、日本国内でフィンランドの情報を
手に入れるのは難しく、フィンランド語学習書もほとんど無かったとか。
そんな状態で現地に飛び込んでいった著者の行動力には、
驚くと同時に学ぶところが多いです。

フィンランドの人々の生活や文化が軽妙に語られていて、
今すぐ現地に旅立ちたくなる、そんな1冊です。

ちなみにタイトルの「猫の言葉」とは、
フィンランド語で相づちをうつときの「二ーン、ニーン」から。
猫と話している気がするそうです!


著者が帰国後に設立した「猫の言葉社」の『いつまでも大切なもの』
については下記に書いておりますので、よろしければご覧ください。
http://hirunekodou.seesaa.net/article/433236217.html

『神を描いた男・田中一村 』

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『神を描いた男・田中一村』(1996中央公論社)


神を描いた男・田中一村 (中公文庫)

「孤高の画家」
こんな表現が、これ以上に似合う人はいないのではないでしょうか。

奄美で大自然に囲まれながら、ひたすらに制作をつづけた一村。
中央画壇とは距離を置き、個展なども開催しなかったため、
「無名の画家」として生きた彼の生涯を描いたのが本書です。

1926年に入学した東京美術学校では、東山魁夷、橋本明治らが同期にいて、
「天才」とまで称されながら、病気などもあり中退。
その後、様々な展覧会に出品するも落選が続き、やがてスケッチ旅行を転機として、
奄美大島に移り住みます。

工場で働いて、お金を貯めたらあとは制作に専念する。
歩くときにもランニングとステテコ姿。
寝るときは一升瓶を枕代わりに。

こんな彼は島の住人たちには変わり者扱いをされ、
中央画壇からは完全に忘れられていきます。
それでも一村が奄美での制作にこだわったのは、
そこに本当の芸術があると感じたからでした。
そして奄美の自然のなかに、神を見ていたのです。

「貧乏でなければ絵はいい描けない」
「売るための絵は描かない」
「絵の中心を決めるのに最低8時間はかかる」
……などなど、
彼の芸術に対する姿勢、そのエピソードには驚くばかりです。
お金や名声のためではなく、本当の意味で芸術を求めた一村だからこそ、
あれだけの絵を残すことができたのでしょう。


「生涯最後の絵」とした作品を手放す際の覚悟、決心には、
思わず涙を誘われます。
一村の作品や業績だけではなく、その人物像にも触れられる1冊です。

いつまでも大切なもの

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『いつまでも大切なもの』(猫の言葉社)


いつまでも大切なもの

フィンランド文化に特化した出版社、「猫の言葉社」の絵本です。

いま『フィンランド語は猫の言葉』という本を読んでいるのですが、
その著者である稲垣美晴さんが設立したのが、猫の言葉社です。
本書の訳も手掛けています。
始めはそのことを知らずに読んでいたので偶然の一致に驚きましたが、
きっと「フィンランド」「猫」というフレーズに引き寄せられたんですね。

以下の3つのお話が入っています。
「ぬいぐるみの涙」
「青い天国へ行った猫」
「すてられた洗濯機」

それぞれ使われなくなったり、老いたり、古くなったりして、
役目を終えようとするものたちの物語です。
読み始めると悲しく切なくなるのですが、やがて新しい居場所が見つかり、
新たな場所での役割が始まる、そんな希望に満ちたお話です。

題名が示す通り、「いつまでも大切なもの」が身近にあるということを
静かに、そして強く感じさせてくれます。


著者のヘルヤ・リウッコ=スンドストロムはフィンランド人。
セラミック・アーティストであり、あの「Arabia」でデザイナーを務めます。
本書もそうですが、陶板を挿絵とする絵本を製作しています。
だからでしょうか、他の絵本の絵とは少し異なる、
深みのある、優しい雰囲気が醸し出されています。

フィンランドのほとんどの家庭には、何かしらの作品があるそう。
家に置いて、じっくり味わいたい一冊です。


はらぺこガズラー

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『はらぺこガズラー』(ほるぷ出版)


はらぺこガズラー

最近見かけて気になっていたこの本。
北欧っぽい絵だなと思ったら、やはりノルウェーの作家でした。

あまりにも大喰いのために捨てられそうになった猫のガズラー。
「そうはいかないぞ」とだんなさんとおかみさんを食べてしまいます!
そしてそのあとは出会うものすべてを次々にお腹のなかへ。

いろいろなものを「ガツガツくっちまった」という訳が最高に面白い!

絵本の定石である繰り返しとリズムのある文章に引き込まれます。
「ガズラー」「ガツガツ」などの言葉は声に出して読みたくなりますね。
そして、「そうきたか」と思わせる、これまた絵本らしい結末へ。

絵のインパクトもさることながら、物語としても完成された王道の絵本です。


作者はノルウェーで子ども番組づくりをしていたそう。
子どもが喜ぶ要素がたくさんちりばめられています。

にっぽんのおにぎり

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『にっぽんのおにぎり』(理論社)


にっぽんのおにぎり


本書は、全国各地のおにぎりが紹介されていて、そのどれもが美味しそう!
見ているだけでお腹が空いてきます。

群馬のネギ味噌もいいし、静岡のサクラエビも食べてみたい。広島の牡蠣のおにぎりも間違いないし、沖縄のポーク玉子も懐かしい……。
でもでも、やっぱり定番の梅干しやおかかもいいですよね!

日本人にとって最も身近とも言える食べ物、おにぎり。
こんなにバリエーションがあったなんて驚きです。

ちなみに紹介だけでなく、つくり方も挟み込まれていますので、
これさえあれば素敵なおにぎりLife間違いなしです!